コミュニティサクセスをアートが担う。CIRCLE by ANRIとartwine.tokyo対談


コミュニティサクセスのイベントとしてワークショップをご利用頂いているCIRCLE by ANRI(ANRI株式会社)の森 真梨乃さんを招き、artwine.tokyo代表の永目 裕紀と対談を行いました。自ら筆を執ることで発揮する、アートによるコミュニケーションの真髄を語っていただきました。

写真左:artwine.tokyo永目、写真右:CIRCLE by ANRI森さん

永目:artwine.tokyo代表の永目裕紀と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。まず初めに、森さんの自己紹介をお願いできますでしょうか?

森さん:はい、CIRCLE by ANRIでコミュニティサクセスを担当している森 真梨乃と申します。CIRCLE by ANRIの運営と、入居者のサポートや入居者同士の交流を担当しています。また、こうしたイベントの企画も私の仕事の一部です。artwine.tokyoさんには三ヶ月に一回お世話になっていて、我々の数ある企画の中でも中核の存在になっています。参加者の皆さんもとても楽しみにしているイベントです。

永目:ありがとうございます。CIRCLE by ANRIの取り組みについて、もう少し詳しく教えて頂いても宜しいでしょうか?

 

CIRCLE by ANRIの取り組み

森さんCIRCLE by ANRIは、我々ANRIの投資先のみが入居できるインキュベーションスペースで、現在18社、約70名が在籍しています。単なるコワーキングスペースではなく、入居者同士できちんと交流をして、横のつながりを作ることを大切にしています。

起業家は孤独感を感じやすいと言われています。悩みを抱えても誰にも言えず、一人で悶々と悩んでしまうことも多い中で、起業家の”同期”を作ってもらい、みんなが孤独にならないことを大事にしています。

ここでできた繋がりは、将来に渡って続くものであり、各々の事業にとっても、その人の人生にとっても良い影響を与えると信じています。こうした主旨で、CIRCLE by ANRIは設立されました。

永目:スタートアップの初期段階は非常に辛いですからね。事業が立ち上がるか、資金調達がうまくいくかどうかなど、いつも不安ですよね。

森さんそうなんです。それから、「健全な嫉妬」というキーワードを標榜しています。隣のテーブルの入居者を見て、悔しい、自分たちも頑張らなきゃと気持ちを奮い立たせてほしい。こうした環境を作るために、ディープテックからインターネット企業まで、いろんな事業が入居できるようにしています。

 

コミュニティ運営者として感じている課題やペイン

永目:先程も、外国人の方がCIRCLE by ANRI内で議論している姿を見かけました。こうした多様性豊かなコミュニティを維持し良好に運営していくのは、とても難易度の高いことだと思います。コミュニティマネジメントという森さんのお仕事の中で、どんな課題や難しさに直面することが多いですか?

森さん入居のオンボーディングの際に「横の会社と積極的にコミュニケーションをとって、CIRCLE by ANRIというコミュニティの発展に寄与してください」とご案内してはいますが、はい交流してください、といってすぐ仲良くなれる人はほとんどいません。なので、こういったイベントを週に2-3回企画して、そこに来てもらって、顔を合わせて、どういう仕事しているんですか、どこに座っているんですか、というように会話をするきっかけをつくっています。

例えばここでは核融合を作っているスタートアップと、AIで漫画を作るスタートアップが机を並べて仕事をしていますが、ここまで領域が異なると、普通だとそもそも出会うことは無いですし、また出会うことがあったとしても、話す内容がなかなか無い。

毎週のコミュニティ企画では、勉強会とか相談会といったもう少し硬めの会も実施していますが、こうした内容だと、テーマに沿った特定の人たちがかたまりがちです。

artwine.tokyoは、絵やアートに興味が多少あるくらいの共通点はあるかもしれませんが、それ以外の共通項は特にない人たちが集まることができます。10代の女性と50代の男性が隣に座る、年齢や体力も関係なく、いろんな人が参加できるアクティビティ。隣に座って絵を描いているだけで、仕事以外で話を作るきっかけになります。私は入居者同士をアットランダムにかき混ぜたいといつも思っているので、こういった意味で、artwine.tokyoの存在はありがたいです。

永目:投資家目線で、投資先が元気になることや、横のつながりが生まれることには、どんな期待値があるのでしょうか?

森さん以前、8か月の間、ほぼ誰とも交流しなかった入居者の方がいました。代表の佐俣が直接「孤独になっちゃだめだよ、ちゃんと交流してね」という話をしてからイベントに参加するようになった。彼女はそれから、CIRCLE by ANRIで出会った人に思いつめていたことをぽろっと相談したらすぐ解決したり、一緒にピッチ資料をブラッシュアップできたり、「こういう人を探している」と相談したらすぐ紹介もらえたりなど、8か月ひとりで悩んでいたことをCIRCLE by ANRIの仲間が一瞬で解決してくれた、ということがありました。

セレンディピティというか、コミュニティって、どう転ぶかわからないところがあります。良いことがあるのは明日か、もしかしたら一か月後かもしれないし一年後かもしれない。でも、CIRCLE by ANRIは絶対に良いことがあると信じている。だから、横のつながりは作っておいてね、という話をしています。

 

artwine.tokyoが貢献できていること

永目:色々なイベントをいつも企画されている森さんからすると、コミュニティを活性化する手段はたくさんご存じなのではないかと思います。その中で、我々が貢献できていることにはどんなことがありますか?

森さんみんなが求めるようなイベントをやっても、似たような属性の人が集まってしまいがちですが、artwine.tokyoは良い意味で、雑多な人が集まれるユニークな存在です。

ボードゲームや映画観賞会などもやっていたりするものの、こうしたものだと少し遊びの側面が強く感じる人もいて、参加するのに後ろめたさを感じて、躊躇する人もいます。

artwine.tokyoは、講師が画家の特徴や美術史といった歴史的な話なども小話として挟んでくれますよね。スタートアップの人は知的好奇心が強い人が多いので、そういった意味でもバランスが良く参加しやすいという声は良く聞きます。

オープンスペースでやっているので皆が横を通るたびに、「こんな風に手取り足取り教えてくれるんだ」「これなら自分でもできるかも?」と、今までアートに無関心だった人も来てくれたりする。 

結果として多様な参加者が来てくれるようになっています。artwine.tokyoくらい異業種コミュニケーションを促せるイベントは今のところ他に無いですし、一番人が集まっている気がします。

 

他企業様へのメッセージ

永目:大変心強いお言葉をありがとうございます。最後に、artwine.tokyoの利用を検討されている企業様へ、メッセージをお願いします。

森さん良いところがたくさんあるのでまとめづらいですが、私はartwine.tokyoを、瞑想のような、内面と向き合う時間だと思っています。

絵画に没頭しながら、描きたいオブジェクトや作りたい色を考えるプロセスを通じて、自分が何を求めているのか、何をしたいのか、否が応でも向き合わなければいけない時間でもあり、メディテーション的に感じています。他の入居者からもそうした声を聞いています。

講師の皆さんが凄く褒めてくださるのも、義務教育以来久しぶりにアートに挑戦する身からすると、とても気分が良いですね(笑)。あれがあるからこそ「私にでも出来るかも」と思えます。そして、誰もが参加できる敷居の低さであるからこそ、「一見おとなしいけど、絵はとても情熱的」といった、喋っているだけではわからないその人の一面を、お互いが垣間見ることができます。

あとは、”確定された未来が無いスタートアップ”にとって、「手を動かし続けることで何かが完成する」というのは安心材料みたいです(笑)。講師のガイダンスを聞きながら筆を進めれば、誰もがしっかり完成させることができるというのは、不安な日々を過ごしている皆にとっての数少ない”確定できる未来”ですね。

私たちのような、インキュベーションをやっている人には当然お勧めですし、企業さまのチームビルディングなどにもお勧めです。お勧めできない人がいないくらい、本当に皆にお勧めです。

永目:“熱”のこもった素晴らしいメッセージをありがとうございました。ぜひ、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

CIRCLE by ANRIは、起業家同士のコミュニティ活性及びスタートアップの集積地となるため2023年2月に六本木ヒルズ森タワーにオープンしたインキュベーション施設です。