2024年9月、artwine.tokyoは「しあわせ気分に満ちる夜」をテーマに、花王株式会社のビオレとゴッホの名画デザインコラボレーションを実施いたしました。
花王株式会社スキンケア事業部ビオレuの千葉萌枝子氏と中辻理紗子氏と日常生活に美しさと心地よさを取り入れる大切さについてartwine.tokyo代表の永目 裕紀と対談を行いました。
永目:私個人的にもビオレの「ザボディぬれた肌に使うボディ乳液」を愛用しており、コラボさせていただき、大変光栄でした。今日はライフスタイルに心地よさを取り入れる大切さやアートとの関わりについて伺えたらと思います。まず初めに「ビオレ」というブランドについて、どのようなブランドで、どのようなコンセプトをお持ちなのか教えていただけますか?
中辻:ビオレは非常に長い歴史を持つスキンケアブランドで、特に肌に関わる製品を長く提供してきたこともあり、私たちにとって肌はとても重要な要素です。肌というものをどう定義するかと考えたときに、人と人のつながりだけでなく、人と社会が関わる大切なコミュニケーションツールとして捉えています。少し堅苦しい表現ですが、「ヒューマンインターフェース」として位置づけており、単に肌をケアするだけでなく、肌を通して社会とのつながりを意識し、長く続くブランドとしてありたいと考えています。もちろん、肌のトラブルを解決する商品を提供しつつ、その先に、世界中の人々が清潔さを感じ、肌を通してポジティブなコミュニケーションを取れるような生活全体へのプラスの影響を目指しているブランドです。
永目:ビオレさんのブランドとしてのビジョン、とても素敵だと感じます。肌を単にケアする対象としてだけでなく、「ヒューマンインターフェース」、人と社会をつなぐ大切なコミュニケーションのツールとして捉えている点に共感しました。日々、肌の清潔さやケアが周りへの印象にも影響すると感じることも多いですが、そこに社会とのつながりまで意識しているのは、ビオレさんならではの視点ですね。今回コラボさせていただいた商品のテーマが「しあわせ気分に満ちる夜」ですが詳しく教えていただけますか?
夜の癒しとアートで豊かさを感じる時間
中辻:近年スキンケア商品などでもよく見かけるのは、睡眠や夜の美容に焦点を当てた商品です。実際に、夜のお手入れ時間にフォーカスした商品は現在、市場でも非常に成長している分野だと感じております。さらに、その夜のお手入れを通じて、暮らしや生活がより良くなっていくような、そういった生活を送りたいという思いが、今多くの方々に強く感じられているのではないかと思っています。
永目:そうですね。近年夜のお手入れが重視されるようになってきましたよね。特に、夜は一日をリセットする時間でもあり、自分自身と向き合う大切なひとときだと思います。そこに心地よいケアを取り入れることで、ただ肌が整うだけでなく、心もリラックスでき、生活全体が豊かになる感覚を私も実感しています。特に今回アートやゴッホに着目された理由を教えていただけますか?
中辻:アートというものが、日々の生活を豊かにする一つの方法として重要な役割を果たしていると思います。アートは高尚なものとして一部の方が楽しむイメージがありますが、最近は日常の中に彩りを添える娯楽として、身近な存在になっていると感じています。特にゴッホは非常に人気があり、夜の風景を描いた作品が多く、夜のお手入れの時間にゴッホの世界観を感じていただけると思い選びました。
永目:夜の時間にふさわしいアートですね。夜の時間は、次の日への準備や気分を高めるための大切な時間です。私たちもartwine.tokyoを立ち上げた際、心の癒しを提供したいと考えました。美術館に足を運ぶのも良いですし、自分で描いてみるのも良い。創作活動に触れることで、自分を取り戻す瞬間を得られる気がします。そうした自分を見つめ直す時間が、現代人にはまだまだ足りていないのではないかと感じています。
中辻:私も同じように感じます。絵を描くという行為は、才能やバックグラウンドがある人だけが楽しむものだと思いがちですが、その時間自体を楽しむことができ、永目さんがおっしゃったように、自分の時間をより豊かに感じられる体験だと実感しました。以前個人的にartwine.tokyoのワークショップに参加させていただいた際にも最初は絵がかけるか不安でしたが、楽しく体験させていただけました。
日常の中に小さな癒しを求めて
永目:具体的に、どのような方をターゲットにしているか、またその方たちにどのように使っていただきたいかについて、お考えをお聞かせいただけますか?
千葉:ふとした日常の中で、気持ちを切り替えたり、穏やかな気持ちを取り戻したりするような日用品として使っていただきたいと考えています。ちょっとした心のケアとして、日常に取り入れてもらえたらと思っています。
永目:「癒し」という言葉がキーワードですね。仕事に追われ、友人やパートナー、あるいは家族との関係に悩む中で、自分だけの癒しの時間がとても大事になると思います。子どもや親の世話をしなければならない時もありますし、年齢が進むにつれて、役割が増えていく中で、そうした瞬間が本当に必要ですよね。
千葉:そうですね。たとえば、手を洗う時やお風呂で体を洗う時間などは、普段あまり意識されていないことが多いと思います。私もつい急いで済ませてしまいがちですが、そうした時間を少しでもゆっくりと楽しんでもらえるきっかけを提供できたらと思っています。
永目:日常生活の中で、手洗いやお風呂は「コスト」のように捉えられてしまいがちですよね。効率を優先して、時間をかけずに済ませようとする。でも本来、人間としての豊かな生き方を考えるなら、たとえば昼には友人と楽しく会話しながら1~2時間かけてランチをするのが理想だと思いますし、仕事もストレスなく意義深いものであってほしい。現代の生き方は、そうした理想とずれている気がします。
ゴッホの夜景とアートが引き出す自分時間の大切さ
永目:ゴッホは日本でも人気のある画家で、特に夜をテーマにした作品を多く描いています。チューブ絵具が開発される以前、画家たちはアトリエで顔料とメディウムを混ぜて絵具を作る必要があり、屋外での制作は困難でした。しかし、チューブ絵具の登場により、外で風景を描くことが可能になり、印象派はその鮮やかな光と色彩を表現する新たな芸術運動を生み出しました。その後、後期印象派の画家たちの中で、ゴッホは特に夜の風景を題材にした作品を多く手がけました。
ゴッホは後期印象派で、他の画家たちと異なり夜の景色に関心を持っていました。モネなどの印象派は日光や反射する光のニュアンスにこだわりましたが、ゴッホは夜をテーマに独自の表現を試みたんです。
今回の3点の絵のうち「星月夜」は、彼が心の病を抱えながらも明るさを描こうとした作品です。「夜のカフェテラス」は、彼がプロヴァンスで見た夜景を色彩豊かに表現したもので、実際にはこんなに明るい景色ではないはずですが、当時の彼にはそのように見えたのだと思います。
千葉:実は私の実家にも「夜のカフェテラス」のポスターがあるんです。ゴッホの絵は幻想的でありながら、日常の中でふと自分の時間を大切にしたくなる魅力があると感じます。
中辻:私も絵を見るのが好きで、ゴッホの作品は特に心惹かれます。近くで見ると現実離れした色使いなのに、少し離れて見ると絵が動き出すようなリアルさがあり、感情を動かしてくれます。晩年のタッチは特に強く、どんな思いで描いたのか想像するのも楽しいですね。また、構図も面白く、浮世絵の影響も感じられます。そうした点から、ゴッホは人の心を揺さぶる、非常に魅力的な画家だと思います。
永目:最後に一言いただけますか?
中辻:今回のプロジェクトでは、コンセプトとターゲットが合致し、実際に「体験」として提供できるという点で、本当に貴重な機会だと思います。こうした機会は滅多にないので、大切に取り組みたいと考えています。
千葉:私も改めて、このような貴重な機会をいただけたことに、心から感謝申し上げます。私たちが意図しているコンセプトを、いかに忠実に伝えるかが非常に難しいと感じていた中で、同じコンセプトを共有し、さらに体験の場を提供いただけたことは、ビオレにとっても非常に貴重な機会でした。そして、一緒に取り組ませていただけたことは、非常に素晴らしい経験だったと感じています。
また、実際に製品を使っていただくことで、香りの良さや体感できる特長を感じてもらうことができました。そうした体験を通じて、私たちが伝えたかったことを実際に体験していただけたことが、今回の取り組みで特に良かった点だと思っています。
永目:ありがとうございます。私たちも同じように、このプロジェクトが非常に貴重な機会だと感じております。日用品とアートの融合は、まさに新しい体験を提供する挑戦であり、コンセプトをどう表現するかという点で、非常に深い考察が必要でした。しかし、実際にお客様に体験していただくことで、香りや触れた感覚を通じて私たちの意図が伝わる瞬間があり、改めてその重要性を実感しました。
ビオレ様と共に、このプロジェクトを進めていく中で、単に商品を提供するだけではなく、心に響く体験を作り上げることができたと感じています。artwine.tokyoのコンセプトとも通じる部分があり、アートと日常が密接に結びついたときに生まれる感動が、生活に豊かさを与えることを改めて実感しました。本日はありがとうございました。